① OpenAI、自社製AIチップを年内にも完成へ
ChatGPT開発元のOpenAIが、自社開発のAI専用チップを2025年内に完成させる見通しです。半導体大手TSMCで3ナノメートル技術による製造を計画しており、高価なNVIDIA製GPU(グラフィックス処理用半導体)への依存を減らす狙いです。独自チップにより、AI計算のコスト削減や安定供給が期待されています。
② 欧州、AI規制を緩和へ:パリAIサミットで表明
2月10日にパリで開催された国際AIサミットで、フランスのマクロン大統領は「欧州はAI分野で規制緩和し、革新を促進する」と表明しました。欧州連合(EU)の幹部もルールの簡素化と企業に優しい運用を約束しています。これは、米国のトランプ大統領がAI規制を撤廃し競争力強化を図る中、欧州企業の競争力を保つための方針転換です。フランス国内でも今後5年間で約10兆円規模のAI関連投資が予定されています。
③ OpenAIにソフトバンクが約4兆円出資か、評価額40兆円規模に
ソフトバンク・グループがOpenAIに対し、約400億ドル(約4兆円)の巨額出資を検討していると報じられました。この出資が実現すれば、OpenAIの企業価値は約3400億ドル(40兆円超)に達する見込みです。マイクロソフトの130億ドル出資を大きく上回る規模で、資金は今後1〜2年かけ段階的に投入される計画です。OpenAIは資金を活用し、大規模データセンター構想など次世代AIインフラ開発を加速させるとされています。
https://www.theregister.com/2025/02/07/softbank_invests_40b_openai/
④ OpenAIのデータ流出疑惑、Microsoftと調査開始
OpenAIの技術から大量のデータが不正取得された可能性が浮上し、提携先のマイクロソフトとOpenAIが共同調査に乗り出しました。中国の新興AI企業「DeepSeek(ディープシーク)」に関連するグループが関与した疑いがあり、セキュリティ研究者が大規模なデータ抜き取りを検知したためです。両社は規約違反の有無や機密情報の流出がないか慎重に確認を進めています。
⑤ Microsoft、Copilotに「Think Deeper」機能を無料提供
Microsoftは、自社のAIアシスタント機能「Copilot(コパイロット)」向け高機能オプション「Think Deeper(シンク・ディーパー)」を全ユーザーに無料開放しました。同社のAI部門トップであるムスタファ・スレイマン氏が発表したもので、OpenAIの高度な推論モデル「o1」を活用し、Copilotが質問を多角的に分析して詳しい回答を提示できるようになります。これにより、ビジネス現場などでのAI回答の質と有用性が向上すると期待されています。
https://www.theverge.com/news/603149/microsoft-openai-o1-model-copilot-think-deeper-free
⑥ MetaのLeCun氏「現行AIは限界、新パラダイムが必要」
「機械学習のゴッドファーザー」の一人であるMeta社チーフAIサイエンティストのヤン・ルカン氏は、現在主流の生成AI(ChatGPTのようなモデル)には限界があると指摘しました。ルカン氏は、言語処理には優れるものの現行AIは物理世界の理解が不十分で、自動運転車や家庭用ロボットの実現には新たなAI手法が必要だと述べています今後3〜5年以内に現在とは異なる次世代のAIアーキテクチャが登場し、技術にさらなる革命が起きるだろうと予測しました。
⑦ Google、AI原則を変更し軍事利用も容認 中国新興に対抗自信
Google傘下のDeepMindのデミス・ハサビスCEOはパリでの全社集会で、競合視される中国の新興AI企業「DeepSeek」の台頭について「技術面で優位は揺るがない」と従業員に語りました。DeepSeekが発表した低コスト高性能なAIモデルについては誇張があると指摘し、Googleのモデルの方が効率的で強力だとしています。また同席でGoogleは、自社のAI倫理規約から「武器や監視への不使用」項目を削除し軍事用途に柔軟な姿勢を示した理由についても説明しました。これは地政学的競争下でAI開発を加速するための方針転換とされています。
https://www.cnbc.com/2025/02/14/google-ai-chief-tells-employees-deepseek-claims-are-exaggerated.html
⑧ 大手出版社、AIスタートアップCohereを著作権侵害で提訴
米政治誌Politicoや英誌The Atlanticなど複数の主要メディア企業が、AIスタートアップのCohere(コヒア)を相手取り著作権および商標侵害で訴訟を起こしました。訴えによると、Cohere社は数千件の記事を無断でAIの訓練データに使用し、その結果、AIが出版社の記事を真似た文章を生成していると主張されています。メディア各社は、許可なき大量スクレイピング(ウェブからの無断情報収集)が「大規模で体系的な侵害」にあたると非難しており、コンテンツ業界とAI業界の間で著作権を巡る緊張が高まっています。
⑨ Apple、中国向けiPhoneにアリババの生成AIを採用へ
Apple(アップル)が中国市場向けのiPhoneに、中国アリババグループの生成AI技術を搭載する計画が報じられました。中国では海外製AIサービスへの規制や独自ニーズがあるため、Appleは現地企業のAIを活用してiPhoneのAI機能を最適化するとみられます。米国企業が自社製品に中国製AIを組み込むのは異例で、各国の規制や競争環境に合わせてAI戦略を調整する動きの一例といえます。
⑩ AIが希少疾患の治療薬を発見、末期患者が寛解
米ペンシルベニア大学の研究チームが開発したAIツールが、4000種の既存薬から希少疾患の治療に有望な薬を特定し、末期状態だった患者の命を救いました。対象となったのは致死率の高い「多発性Castleman病」という難病で、AIは関節炎治療薬アダリムマブを新たな有力候補として提示しました。医師がこの薬を投与したところ患者は症状が改善し、緩和ケア目前から2年近く寛解が続いています。既存薬の転用候補をAIが発見したこの事例は、他の希少疾病でも治療法を見つけ出す可能性を示しています。
https://www.sciencedaily.com/releases/2025/02/250205170906.htm
編集者コメント
ソフトバンクのOpenAIに対する出資のニュースが界隈をざわつかせましたね。
高値掴みしちゃうんじゃないか?というコメントも多かったような気がしますが、ただの投資ではなく、将来のシナジーが主目的だと思うので、結果次第。個人的にも応援してます。
あと、最後の「AIが末期状態の患者を救った」という記事はすごく嬉しいニュースですね。
AIの使いみちとして「効率化」「コスト削減」みたいなところがよくフォーカスされるんですが、こういう新しい価値をつくったような事例が増えてくると、AIへの見方も変わってくる気がします。