① 米国、AIチップの世界的流通に規制強化
米国政府が高度なAI(人工知能)用半導体チップの輸出規制を一段と強化する新ルールを発表しました。中国やロシアなど約120か国への先端AIチップ供給を制限し、日本や英国など親密な18か国は対象外とします。米国が自国と同盟国に最先端技術を集中させ、中国などへの供給を抑える狙いで、米国のAI分野での主導権維持を目指す措置です。
② CES2025: 現代自動車とNVIDIAが将来のモビリティ向けAIで提携
韓国の現代自動車と米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)が、AI技術を活用した次世代モビリティ(未来の移動手段)の開発で戦略提携しました。自動運転やロボット、デジタルツイン(工場の仮想モデル)など幅広い分野で協力し、NVIDIAの高速演算チップやAIソフトを現代自の車両開発や製造現場に活用します。仮想空間で工場を再現して効率化する技術や、人型ロボット開発プラットフォームの導入にも取り組み、安全でスマートな車作りと生産性向上を目指します。現代自動車はこの提携によってAIを駆使した未来のモビリティ分野で先導役となる狙いです。
③ Cerebras社とメイヨークリニック、リウマチ治療を予測するゲノムAIモデル開発
米AIハード企業のCerebras Systems(セレブラス)と医療機関メイヨークリニックが、関節リウマチ患者に最適な治療法を予測する大型のゲノム(全遺伝情報)AIモデルを共同開発しました。患者の遺伝子データと疾患データを組み合わせて学習した「基盤モデル」(大量データで訓練された汎用AIモデル)で、患者ごとに効果の高い薬剤をAIが提示します。まずリウマチ治療への応用を目指し、将来的にはがんや心疾患など他の病気にも応用できる可能性があります。この成果はサンフランシスコで開催の医療カンファレンスで発表され、AIと最先端半導体技術が医療の個別化治療に貢献する例として注目されています。
④ 米大統領令でAIデータセンターの電力確保を支援
バイデン米大統領は、急増するAIデータセンター(AI処理用の巨大な計算施設)の電力需要に対応するため、政府が支援する大統領令に署名しました。この大統領令では国防総省やエネルギー省が保有する土地を民間に貸し出し、1か所で原発数基分に相当する大規模(ギガワット級)のAIデータセンター建設を促進します。米政府の試算では2028年までにAI向けデータセンターで最大5ギガワットもの電力容量が必要になるとされ、安定した電力供給なしにはAIインフラ拡大が難しい状況です。今回の措置はクリーンエネルギーによる発電能力増強も含め、AI産業の基盤整備を図る狙いがあります。
⑤ AIチップ新興企業Blaize、12億ドルのSPAC合併で株式公開へ
AI向け省電力チップを開発する米新興企業Blaize(ブレイズ)が、特別買収目的会社(SPAC)との合併によって株式公開(上場)すると発表しました。この合併により企業評価額は約12億ドル(約1600億円)となり、合併完了後に約1億1600万ドルの転換社債による資金調達と、追加3600万ドルの出資を予定しています。カリフォルニア拠点のブレイズ社は既にサムスンなどから3億ドル超の資金提供を受けており、同社の主力製品である「Blaize 1600」というAI半導体はグラフィックスカードより少ない電力で機械学習モデルを動かせる点を売りにしています。新たな資本を得て、省電力で効率的なAIチップの開発・市場展開を一段と加速させる考えです。
https://siliconangle.com/2025/01/14/ai-chip-startup-blaize-goes-public-via-1-2b-spac-merger/
⑥ スポーツニュースにAI生成の偽記事、大手広告主も誤掲載
ネット上のスポーツニュースサイトに、一見有名メディアと間違えそうな偽サイトが多数確認されました。これらのサイトはAIで自動生成した質の低い文章や他社記事の盗用を混ぜ合わせて掲載し、閲覧数を稼いで広告収入を得ようとしています。実際にBBC Sportになりすました「BBCSportss」という偽サイトでは、AI生成の誤情報が掲載され、多くの利用者や広告主が本物と勘違いした例が報告されました。こうした低品質なAI記事の氾濫に対し、「信頼できる報道を脅かす」として報道関係者や監視団体が警鐘を鳴らしています。
https://www.wired.com/story/ai-slop-sports-news-sites/
⑦ AI台頭でオンライン教育への投資急減、10年で最低に
生成AIの普及によって手軽に知識習得が可能になった影響で、オンライン教育(EdTech)企業への投資が大きく落ち込みました。2024年に世界のEdTech企業が調達した資金額は、過去10年で最低水準となっています。AIが質問に答え学習を助ける便利さの一方で、オンライン教育プラットフォームが提供してきた「深い理解を促す学習体験」の価値が薄れ、投資家離れを招いた形です。専門家は「AI時代にふさわしい教育サービスへの転換が急務」と指摘しており、従来の教育テック企業は戦略見直しを迫られています。
https://www.ft.com/content/54e8d249-8b95-44df-8bb4-c48ea20c7857
⑧ グーグル、Workspace利用企業に生成AI機能を追加料金なしで提供
米グーグルは、クラウドオフィスサービス「Google Workspace」で提供している生成AI機能を追加料金なしで利用できるようにすると発表しました。これまで文章の要約や会議メモ作成などを行うAI機能(Gemini)は1ユーザーあたり月20ドルの追加料金が必要でしたが、1月16日以降はビジネスおよびエンタープライズプラン契約者に標準搭載されます。同時にWorkspace自体の利用料金が約17〜22%値上げされるため、実質的にはAI機能分を含めた価格改定となります。グーグルは追加料金を撤廃することで企業へのAI普及を促し、生産性向上につなげる狙いです。
https://www.pymnts.com/google/2025/google-makes-ai-features-free-to-workspace-subscribers/
⑨ アップル、AI生成のニュース見出し誤配信で新機能を一時停止
米アップルは、ニュース記事の見出しをAIで要約してスマホに通知する新機能を一時停止しました。導入直後から誤った見出しを配信したためです。例えばBBCのニュースをAIが誤解し、「殺人事件の容疑者が自殺」といった虚偽の見出しを送信してしまうトラブルが発生しました。報道機関や記者団体から「誤情報で信頼を損なう」と批判を受け、アップルは開発者向けソフト更新でこのAI要約機能を無効化し、改善ができるまで一般提供を見合わせる方針です。
⑩ OpenAI、新型推論AIモデル「o3 mini」を完成・近日公開へ
ChatGPTの開発元である米OpenAI社は、新たな推論型AIモデル「o3 mini」を完成させ、数週間以内に公開すると発表しました。OpenAIのアルトマンCEOがSNS「X」で明らかにしたもので、外部向けプログラム開発用のAPIとChatGPT向けに同時提供を開始する予定です。昨年末から試験運用していた高度推論モデルシリーズ(o3とo3 mini)の一つで、より複雑な論理問題の解決が可能になる次世代型です。OpenAIはこのモデルで現行のChatGPTを上回る性能を実現し、グーグルなど競合他社に対抗する狙いとみられます。