① AMDとデル、AI搭載PCで提携を発表
家電見本市CES 2025で、半導体大手AMD社はAI処理用チップ「Ryzen AI」シリーズを搭載した次世代パソコンを発表しました。デル社がこのAI機能付きCPUを初めて自社の業務用PCに採用することで合意し、今後はパソコン上で生成AI(文章や画像を作るAI)がスムーズに動作する環境を整える方針です。身近なPCでAIが使えるようになることで、企業も日常業務にAIを活用しやすくなると期待されています。
② 2025年、世界で進むAI規制の動き
2025年は各国でAI(人工知能)を巡るルール作りが大きく進みそうです。EU(欧州連合)では包括的なAI規制法案「AI法」の施行に向けた最終調整が進み、米国では新政権の下でAI推進策と安全対策の両面から政策見直しが予想されています。日本や他の国々でもAIの倫理や安全ガイドライン策定が活発化しており、世界的に企業はAI活用と規制対応の両立が求められています。
③ 米国土安全保障省、生成AI活用の手引きを公開
アメリカ国土安全保障省(DHS)は、政府機関での生成AI(文章や画像を自動生成するAI)の安全な利用方法をまとめたガイドブック「ジェネレーティブAI公共部門向けプレイブック」を発表しました
。この手引きには、公務でAIを使う際の留意点やプライバシー保護策が含まれており、職員が新しいAI技術を業務改善に活かしつつリスクを避ける狙いがあります。生成AIの公的活用に向けた具体的指針が示されたことで、行政分野でのAI活用が加速しそうです。
https://www.dhs.gov/news/2025/01/07/dhs-unveils-generative-ai-public-sector-playbook
④ ジョン・ディア、無人トラクターなど自動農機をCESで公開
米農業機械大手ジョン・ディア社はCES 2025で、新型の自動運転トラクターなどAI駆動の建設・農業機械を発表しました。カメラやAI技術の改良により、農場のまっすぐな畑だけでなく果樹園の狭い通路や建設現場でも自律走行できるようになっています。人手不足の深刻な農業や建設分野で、作業を自動化し効率化する狙いです。これはAIをビジネスに活かす好例で、中小企業でも今後、機械の自動化による省力化が期待できます。
https://www.theregister.com/2025/01/07/john_deere_new_autonomous_tractors/
⑤ NVIDIAとKrafton、ゲーム内に会話できるAIチームメイト導入へ
半導体大手NVIDIA社はゲーム開発会社Krafton(クラフトン)と提携し、人気ゲーム「PUBG」にプレイヤーと協力して戦うAI搭載のチームメイトキャラクターを導入すると発表しました。新しいNPC(ノンプレイヤーキャラクター)はNVIDIAの生成AI技術「ACE」を活用し、プレイヤーの音声チャットに応答したり、指示に従って物資を集めたり敵と戦ったりします。ゲーム内で人間さながらにコミュニケーションできるAIの登場は、エンタメ分野での生成AI活用の最新動向です。
⑥ Appleのニュース要約AI、一時停止に
Apple社の最新iPhoneにはニュース通知をAIが要約する新機能が搭載されましたが、誤情報を含む要約が確認されたため改善されることになりました。例えば事件記事の内容を誤って伝えるケースがあり、BBCなど報道各社がAppleに修正を要請していました。AppleはこのAI要約機能を一時停止し、今後のソフトウェア更新で精度向上を図るとしています。大手企業も生成AIの「うその情報」(いわゆるホール(幻覚))問題に直面し、安全性確保に取り組んでいます。
⑦ デルタ航空、AI旅行アシスタント「コンシェルジュ」を発表
米デルタ航空はCES 2025で、旅行者をサポートする生成AI搭載のデジタルアシスタント「デルタ・コンシェルジュ」を発表しました。スマホアプリ上でチャットや音声により利用でき、フライトの所要時間や必要な書類(パスポート期限など)を教えてくれます。将来的には天気に合わせた通知や空港内ナビ案内など、個々の旅程に応じた助言も行う予定です。大手航空会社によるAI活用で、出張や旅行の利便性向上が期待されています。
https://www.emergingtechbrew.com/stories/2025/01/08/delta-ai-chatbot-uber-ces-2025
⑧ ナイジェリアの教育実験、GPT-4チューターで学習効果2年分向上
世界銀行の報告によると、ナイジェリアで試験導入されたGPT-4搭載のAIチューターによって、生徒の学習進度が飛躍的に向上しました。6週間の放課後プログラムで、生徒は通常2年分に相当する英語などの学力向上を示したとのことです。特に開始時に遅れのあった女子生徒の成績が大きく伸びました。教師のサポートの下でAIを「仮想家庭教師」として活用したことが奏功しており、教育分野で生成AIが有効に機能した好例といえます。
https://blogs.worldbank.org/en/education/chalkboards-chatbots-transforming-learning-nigeria
⑨ 医療AIスタートアップ「ヒポクラティックAI」、約200億円を調達
医療向け生成AIを開発する米新興企業ヒポクラティックAI社がシリーズB投資ラウンドで1億4,100万ドル(約200億円)を調達し、企業評価額16.4億ドル(約2,500億円)に達しました。著名VCのクライナー・パーキンスが主導し、GoogleやMicrosoft、医療機関も出資しています。ChatGPT公開以降、医療分野でもAI企業への大型投資が続いており、同社は医師や研究者チームと協力して安全に使える医療用チャットボット開発を進める計画です。
⑩ AI、他者の心を読む?スタンフォード大学研究
スタンフォード大学の研究チームは、最新の大型言語モデルであるChatGPT-4(GPT-4搭載モデル)が「他者の信念を推測する」課題で6歳児レベルの正答率を示したと報告しました。この研究では、人間の心理を読む能力「心の理論」を試すため、絵本の登場人物が抱く誤解をAIがどれだけ当てられるかをテストしています。GPT-4は75%のケースで正しく推測し、人間の幼児に匹敵する社会的推論力を見せました。まだ完璧ではないものの、AIが人間らしい推論を獲得しつつあることを示す興味深い成果です。