AIで業務効率化できる仕事、業界ごとの事例を紹介

大森 敏彦
大森 敏彦
December 19, 2024
AIで業務効率化できる仕事、業界ごとの事例を紹介
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2023年以降、生成AIが広く認知されるようになり、ビジネスパーソンが生成AIで業務を効率化する機会も増えつつあります。また、全社的にAIを導入する企業の事例もここ数年で飛躍的に増加しました。

本記事ではAIで業務効率化できる仕事や、業界ごとの業務効率化の事例、AIで業務効率化を進める際のポイントなどについて詳しく解説します。

AIで業務効率化できる仕事

AIを活用することで、一般的な事務作業から、業界・業種・職種に特化した仕事まで、多岐に渡る業務の効率化が見込めます。下記では一例をご紹介します。

全般:カスタマーサポート

カスタマーサポートなど、マニュアルがある顧客対応業務は、AIチャットボットを使えば24時間365日の対応が可能になります。「商品の返品方法を知りたい」「営業時間を確認したい」といった定型的な質問に自動で回答し、オペレーターの負担を減らすことができます。例えば、「特定の商品の在庫はあるか」といった問い合わせにも、在庫管理システムと連携すれば自動回答が可能です。

また、定型外の問い合わせに対しては、AIで振り分けをすることも可能です。「製品の不具合について」は技術サポート部門、「新規の予約・サービス申し込みの問い合わせ」は営業やインサイドセールス部門といった具合です。担当者のカレンダーと連携できるサービスを使えば、打ち合わせ日程もAIが調整してくれます。

全般:資料・書類作成

企画書や報告書の作成など、ドキュメント作成業務はAIの得意分野です。例えば、「新商品の販促企画書を作成したい」というニーズに対して、過去の類似企画書を参考に、「市場分析」「ターゲット層」「販促施策」「予算計画」といった必要な要素を含んだ文書を自動生成してくれます。生成AIの中にはパワーポイントのようなスライドを自動生成してくれる専門のAIもあります。最終的な手直しは必要ですが、ゼロから作るよりもはるかに効率的です。

関連記事:スライドを自動作成する生成AI「Gamma(ガンマ)」の使い方・料金を紹介

全般:文字起こし・議事録作成

会議の録音データをもとに自動で文字起こしを行い、要点をまとめた議事録を作成してくれるサービスが数多く登場しています。また、オンラインミーティングで、複数の話者を識別し、発言者を明記したうえで文字起こししてくれるサービスもあります。

IT:データ分析の自動化

売上データや顧客ごとの購買履歴などの大量のデータを入力することで、AIが傾向を自動で分析します。例えば、過去の売上データをもとに販売予測を行い、最適な在庫を検討するなどが可能になります。

採用:人材採用プロセスの改善

応募者の書類選考から面接日程の調整までをAIがサポートすることで、採用業務の効率化が可能です。履歴書をスキャンして「プログラミング経験3年以上」「英語力ビジネスレベル」といった応募要件とのマッチ度を自動判定して書類選考し、面接日程を候補者の希望日時と面接官のカレンダーをもとに自動で設定します。

製造:サプライチェーンの最適化

需要予測や在庫管理も、AIを使うことで自動化し精度を向上させることが可能です。「夏季の飲料需要」を予測する際は、過去の販売データに加えて気象予報や地域イベント情報をキャッチアップし、「来週は気温上昇でペットボトル飲料の需要が20%増加」といった予測を行います。適切な発注量の予測や、工場の生産調整や倉庫間での在庫の管理も連携して行うことが可能です。

製造:品質管理・異常検知

工場の製造ラインでの品質検査にAIを導入することで、不良品判別などの工数が削減されます。カメラで撮影した製品画像から「傷」「変形」「色むら」などの不良を検出し、人の目では見逃しやすい微細な欠陥も高精度かつ自動で発見します。また、製造設備のセンサーデータを分析し、「振動が通常値より15%増加」「温度上昇が急激」といった異常の予兆も検知し、アラートを出すことが可能で、安全管理にも役立ちます。

法務:契約書の内容確認

契約書の雛形を作成するときの確認作業において「秘密保持条項の有無」「支払い条件の確認」「契約期間の明記」といったチェックポイントをAIが自動でチェックします。また、同じ雛形の契約を別の契約で使うときは、過去の契約書との比較も行い、「通常と異なる条項がある」「必須項目の記載漏れ」といった注意点の指摘や、個別で記載した内容に齟齬がないかのチェックも可能です。

医療:診察・診断サポート

レントゲンやMRIなどの医療画像を分析し、「腫瘍の可能性がある箇所」をAIが自動検出する仕組みもあります。患者の症状や検査結果から、「考えられる疾患」「追加で必要な検査」を過去の傾向から提案したり、電子カルテの記載内容から「投薬の重複」「アレルギー情報との照合」なども自動チェックが可能です。

物流:配送ルートの最適化

配送先の位置情報、道路の渋滞状況、天候などをリアルタイムで分析し、最適なルートをAIが提案します。「午前中の配達希望」「冷蔵品の優先配送」といった荷物ごとの個別の条件も考慮し配送順序を決定、急な配送依頼を組み込む場合も、既存のルートと照らし合わせた提案が可能です。

企業におけるAIの業務効率化の実例8選

ここからは、大手企業から中小企業まで、様々な企業において実用化されているAIの業務効率の実例を8つ紹介していきます。

自社特化のチャット型AI:パナソニックコネクト

パナソニックコネクトでは、社内専用の生成AI「ConnectAI」を2023年6月から導入。約4万件の利用実績があり、主に戦略策定や商品企画で活用されています。社内の業務知識を学習させることで、より実用的な提案が可能になり、今後は商談支援やマーケティング領域への展開も計画しています。

参考:パナソニック コネクト 生成AI導入1年の実績と今後の活用構想

https://news.panasonic.com/jp/press/jn240625-1

AI需要予測:トリドールHD

丸亀製麺を運営するトリドールHDでは、富士通のAI需要予測システムを全店舗に導入しています。天候や地域イベントなどの様々なデータを分析し、各店舗のメニュー・食材の需要を予測。これにより、食材の廃棄ロスを減らしながら、品切れによる機会損失も防いでいます。今後は海外店舗への展開も予定しており、グローバルな事業展開を支えるDXの一環として位置づけています。

参考:トリドールホールディングス、富士通のAI需要予測の活用により真のグローバルフードカンパニーを目指すDXを推進

https://pr.fujitsu.com/jp/news/2023/02/2.html

新卒採用向け生成AIチャットボット:ソフトクリエイト

ソフトクリエイトでは、新卒採用サイトに生成AI技術を活用したチャットボット「ソフクリAI質問ルーム」を設置しています。就活生からの「社風」「福利厚生」「選考プロセス」といった質問に24時間対応が可能に。採用担当者の業務負担を軽減しながら、応募検討者の疑問にもタイムリーに答えられるようになりました。

参考:生成AIの業務効率化事例- 新卒採用向け 生成AIチャットボット「ソフクリAI質問ルーム」

https://www.softcreate.co.jp/rescue/AI/11

工場での不良品の検知:キューピー

キユーピーでは、ポテトサラダやベビーフードの製造ラインにAIを活用した画像検査システムを導入しています。「具材の偏り」「異物混入」といった不適合品をAIが自動で検知し、「不良」の場合は空気噴射で製品を除去するケースもあります。従来の目視検査では難しかった高速・高精度な品質管理を実現しています。

参考:キユーピーがAIで検品改革、ポテトの不良品は空気噴射で除去

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nc/18/051600049/051600001/

参考:AIを活用した原料検査装置をグループに展開 | ニュースリリース | キユーピー

https://www.kewpie.com/newsrelease/2019/1152/

不正利用の検知:三井住友カード

三井住友カードは、VisaのAIを活用した不正検知システム「VRM」を導入しました。カード取引データをリアルタイムで分析し、不正利用の可能性が高い取引を自動で検知。不正利用による被害の拡大を防ぎ、カード会員の安全な取引を支援しています。

参考:三井住友カード、VisaのAIリスクソリューションを不正検知システムとして導入

https://www.smbc-card.com/company/news/news0001535.jsp

h3 コンクリートの品質管理:鹿島建設

コンクリートは多くの建築物に使用されており、経年劣化によるひび割れなどをモニタリングする必要があります。この品質管理にAIを導入する事例が増加中です。鹿島建設では、コンクリート構造物の表面品質をAIで評価するアプリを活用。写真からAIが品質を分析することで、担当者の経験に依存せず、安定した精度でコンクリートの品質管理が可能になっています。

参考:AIでコンクリート構造物の表層品質を評価するアプリを開発

https://www.kajima.co.jp/news/press/202209/13c1-j.htm

建築・建設業界でAIはどう活用できる?事例も含めて紹介

生成AIの活用事例を大手企業・サービス・業務効率化にわけて紹介

製薬での研究開発効率化におけるAI活用:第一三共

第一三共は、AIを活用して毒性試験データや報告書を解析する仕組みを導入しました。大量のデータから新たな毒性の傾向や関係性を発見することで、研究者の発想を広げ、効率的に新薬の開発を進めることを目指しています。データ同士の類似性や関連性を視覚的に示す機能も備え、研究者がこれまで見落としていた情報を簡単に把握できるようになりました。

参考:第一三共とDrug Discovery AI Factoryを活用した 毒性情報の最適化および解析業務に関する契約を締結

https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20241112518823/

銀行での融資審査:群馬銀行

群馬銀行では、融資業務にAIを活用する取り組みを始めています。具体的には、過去の類似事例を自動で抽出したり、審査の重要ポイントを提示したりする仕組みを導入。これにより、個人の経験やスキルに頼ることなく、安定した融資業務の実現を目指しています。

参考:フューチャーアーキテクトと群馬銀行 融資業務領域における生成 AI 活用の実証実験を開始

https://www.future.co.jp/press_room/PDF/PressRelease_FutureBANK_GenerativeAI_PoC_240708.pdf

AIを使って業務効率化を目指す時のポイント

例に見てきたように、多くの企業で業務にAIが活用されています。ここからは、AIで業務効率化する際のポイントについて解説します。

業務プロセスの明確化

AIを導入する前に、現状の業務の流れを詳しく分析することが重要です。「どの作業に最も時間がかかっているか」「ミスが起きやすい工程はどこか」「手作業で行っている反復的な作業は何か」といった点を具体的に洗い出します。AIの導入による改善効果が高い業務を特定することが重要です。

AIの活用に必要なデータの用意

AIの性能は、学習に使用するデータの質と量に大きく依存します。例えば、需要予測のAIを導入する場合、「過去3年分の売上データ」「顧客属性」「販促施策の実施履歴」といったデータを用意する必要があります。また、「データの形式」「更新頻度」「保存期間」なども事前に整理しておきましょう。

目的に合わせてツールを選ぶ

目的に応じて、最適なAIツールを選択することが重要です。例えば、カスタマーサポートの自動化なら「ChatGPT」「Claude」といった大規模言語モデルなどが、AIの代表例として挙げられます。また、日本企業が提供している業界特化型のAIサービスも増加しており、導入ハードルが比較的低いものも多いです。自社の業務に最適なサービスを提供している会社を探してみましょう。

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専門領域はプロに相談する

近年では特にAIがブームになっていますが、実はAIが最適な解決策ではないケースもあります。例えば、「単純な定型作業の自動化」はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:プログラムにより定型業務の自動化が可能)の方が適しているケースや、「複数システム間のデータ連携」は、システム開発で対応する方がコストは低く技術的な難易度が低いこともあります。

特に予算も業務規模も限られている中小企業の場合は、「AIを使って解決したい」という手段から考えるのではなく、まずは問題点と実現したい姿を認識し、専門家に相談しながら、最適な解決方法を一緒に探っていくのが近道です。

まとめ:AIによる業務効率化は日々進んでいる。ただし「目的」を明確にすることが重要

AIを活用した業務効率化は、多くの企業で成果を上げはじめています。「現状の業務分析」「必要なデータの準備」「目的に合わせた適切なツールの選択」といった準備をしっかり行うこと、また技術に詳しい会社とタッグを組んで進めていくことが、業務効率化では重要です。

導入後も継続的な改善を行い、社員の理解と協力を得ながら、段階的に展開していくことをおすすめします。特に、初期段階では小規模な実証実験から始め、効果を確認しながら対象業務を広げていく方法が良いでしょう。

本メディアでは、AIによる業務効率化をはじめとした、生成AIの活用方法について紹介していきます。メディアを運営するatmaLabでは、企業のAI / IT 導入アドバイザリーやAI / IT システム開発を受け付けています。

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大森 敏彦
大森 敏彦
2016年からWebマーケティング業務に従事し、プログラミング教育事業やBtoBマーケティング、旅行業界などに携わる。自作のGPTsではスプレッドシートの業務効率化を日々行なっている。好きな生成AIはGemini。
峯林 晃治
監修:
峯林 晃治
Webディレクター、SEOコンサルタントを経て、2013年に事業会社に入社。主にBtoB領域のデジタルマーケティングに携わる。2020年に独立。ファストマーケティング株式会社を立上げ、BtoB企業向けのコンテンツマーケティングの支援サービスを提供。
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