研究者や学生、医療従事者やビジネスパーソンの情報源として論文は非常に重要です。いっぽう、膨大な論文のなかから必要な論文を探し出すのは大変な作業です。海外の論文を探すケースも多く、通常業務のかたわら数ある論文の中から信頼できるデータを見つけ、必要な箇所を確認するのは負担が大きいです。
近年のAI技術の発達により、論文検索を効率化できるツールはいくつか登場しています。今回の記事では、次世代型論文検索エンジン「Consensus」の使い方を紹介します。
Consensus(コンセンサス)は論文が検索できるAI
Consensusは、AIを活用した論文検索エンジンです。2億以上の論文データベースから検索キーワードにマッチする論文を探し出してくれます。ただ検索するだけでなく、AIによる自動要約や質問への回答機能も備えており、効率的な情報収集が可能です。
公式サイト
Consensusの機能
論文の検索結果の表示
検索キーワードを入力すると、関連する論文が一覧で表示されます。タイトルや著者、概要が確認できるため、必要な情報を素早く見つけられます。
検索上位の論文から要約を生成
検索結果の上位に表示された論文については、AIが数行程度に要約します。要点をすぐに把握できるため、論文を一つひとつ読む手間が省け、必要な論文を見つけやすくなります。
質問に対して論文をソースに、Yes/ Possibily/Noで回答
特定の質問を入力すると、関連する上位の論文を元にAIが「Yes(はい)」「Possibly(おそらく)」「No(いいえ)」といった形で回答の傾向を生成してくれます。例えば「○○に効果がある治療法は存在するか?」といった質問を行った際、論文の分析結果をもとに「Yes」の結果となる論文が60%、「Possibly」が20%、「No」が20%という形式で論文の傾向をグラフ化してくれます。
スタディスナップショット
検索結果の中で重要な要素を自動でハイライトしてくれるので、内容を視覚的に理解しやすいです。(有料オプションです)
ブックマークとカスタムリスト作成
気になる論文を保存できる機能や、カスタムリストという機能で整理することが可能です。必要な論文を後からでも探しやすくなっています。
論文のソースのサイトへのアクセス可能
気になる論文は、直接ソースサイト(PubMedやGoogle Scholarなど)へアクセス可能です。より詳細な情報を確認したいときに便利です。
Consensusの価格・プラン
Consensusには4つのプランがあります。(2024年11月執筆時点)
無料版でも回数制限なく論文を検索可能ですが、要約や集計機能の回数が限られています。有料版ではこれらの制限が解除され、より快適に利用できます。個人用の有料プランとチームで使うプラン、さらに高機能なエンタープライズプランがあります。
学生の方は、.eduまたは.acのメールアドレスを使用して登録することで、Premiumプランを40%割引で利用できます。
最新の情報や詳細は、Consensusの公式サイトをご確認ください。
参考:Consensus pricing page - upgrade to Premium today.
https://consensus.app/home/pricing/
Consensusは英語のみサポート
2024年11月現在、Consensusは英語のみ対応しています。大半の学術論文が英語で記載されているため、利用する際は英語が必須です。ただし、Chat-GPTやClaudeなどの言語処理能力の高い生成AIを活用すれば、英語の文章を自然な日本語に翻訳してくれます。「日本語で要約して」とプロンプトを入力すれば、必要なポイントの確認もスムーズです。
OpenAI o1(Chat-GPT o1)とは?最新モデルの特徴や使い方を説明
後述するGPTsなら、機能は制限されますが簡単なリサーチであれば日本語でも活用可能です。
Consensusの使い方
Consensusの具体的な使用方法についてキャプチャ付きで開設していきます。
ユーザー登録
公式サイト(https://consensus.app/)にアクセス。
右上の「Try for free」ボタンを押して、メールアドレスとパスワードを入力し、アカウントを作成します。Googleアカウントからログインも可能です。
登録完了後、無料プランから利用可能です。
論文検索の方法
キーワードを入力して検索
トップページの検索バーにキーワードを入力すると、関連する論文が一覧表示されます。
ここでは「睡眠とストレスの関係性」について論文を調べてみます。「Relationship Between Sleep and Stress」と検索バーに入力してみます。
フィルタ機能を開くと、論文の発表された年代を指定するなどの機能があります。
検索してみると、Proプランにチェックを入れている場合は、まずConsensus側で様々な論文を元にした要約を生成してくれます。
スクロールすると、各論文のタイトルが出てきます。
各論文の要約機能を活用
検索結果の論文タイトルをクリックすると、AIが生成した要約の確認が可能です。重要ポイントだけを素早く把握できます。
各論文の要約機能を活用-1
質問機能を活用
検索バーに質問を入力すると、AIが関連論文を基に「Yes / Possibly / No」の形式で回答します。
「睡眠とストレスは関係するか?」という質問を英語で「Are sleep and stress related?」と入力してみます。
「Consensus Meter」にて、Yesが95%、Possiblyが5%、Noが0%と出ました。このように、質問への回答を論文の傾向をもとに回答してくれます。
ちなみに、元々は「睡眠する時間が不規則になるほど、ストレス耐性は低くなるか?」という質問を「Does stress tolerance decrease when sleep schedules become irregular?」という英文で入力しましたが、回答が上手に吐き出されなかったため、よりシンプルな質問にしました。
このように上手に質問が出せない場合、Consensusの公式がおすすめの質問スタイルを紹介してくれているので、そちらを参考に質問文を作成してみてください。
参考:How to Search & Best Practices
https://consensus.app/home/blog/maximize-your-consensus-experience-with-these-best-practices/
論文のブックマーク
気になる論文はブックマーク機能を活用して保存すると、左側のメニューバーからいつでもアクセスが可能です。
Consensus GPTsも使用可能
有料版のChat-GPT Proユーザーは、GPTsという、特定のタスク(記事作成、旅行計画、レストラン検索など様々)に最適化されたChatGPTを利用することが可能です。Consensusの公式が提供するGPTsもあり、マイページから追加することで、簡単に論文検索が可能になります。無料版ユーザーも制限付きでGPTsを試すことが可能です。
GPTsにおけるConsensusの使い方
Chat-GPT Proにアクセスし、左側のメニューバーの「GPT を探す」をクリックします。Consensusを選択してください。
「GPTを探す」のトップ画面に出てこない場合は、Consensusで検索してください。
Consensusを選択したら、「チャットを開始する」を押してください。
普段のGPTの画面に移ります。日本語で質問を入力すると、AIが論文に基づいて日本語で回答してくれます。
元の論文にアクセスし、英語の原文・要約を確認できます。Consensus上の検索画面や「Consensus Meter」による質問回答はありませんが、手軽に日本語で調べるのに適しています。
論文検索できる他の生成AI
Consensusの他にも、以下のAIツールも論文検索に活用できます。
・Perplexity AI:簡単な質問から論文検索まで幅広く対応可能です。
・Elicit:仮説構築やデータ分析に強いです。
・SciSpace:論文解読や要約が可能です。
・Connected Papers:関連論文を視覚的にマップで表示してくれます。
おすすめの使い分け方
簡単な質問形式で効率的に情報を得たい場合は、この記事で紹介している「Consensus」がおすすめです。
一方、論文の全体像や関連研究を深掘りして調べたい場合は、「Connected Papers」がおすすめです。下の画像のように、関連論文が年数とともにマインドマップで表示されるため、類似テーマについて次々と理解を深めることができます。
参考:Connected Papers | Find and explore academic papers
https://www.connectedpapers.com/
まとめ:Consensusで効率的に論文検索・要約をしよう
Consensusは、AIによる効率的な論文検索を可能にするツールです。研究者やビジネスで論文情報が必要な方にとって、時間短縮になります。日本語への対応はありませんが、Chat-GPTやClaudeを活用することで、日本語ユーザーにも使いやすい環境を構築できます。